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Veronika Wildgruber(ヴェロニカ・ワイルドグルーバー)インタビュー


多才なデザイナー、ヴェロニカ・ワイルドグルーバーの眼鏡デザイナーとしてのキャリアは有名な眼鏡デザイナー、アラン・ミクリの元、パリでスタート。

その後、若く才能あふれる彼女は、初出展のデザインでシルモドールを受賞。


受賞から12年、エルメスを含む多数のブランドとの仕事を通して、ブランドは確率され、高い評価を受けてきた。

彼女自身の名を冠したブランド、ヴェロニカ・ワイルドグルーバーの創設者兼ディレクターである彼女にEyestylistが取材をした。


現在に至るまでの道のりと、あなたの初期の頃の活動について聞かせてください。

私は北イタリアのボルツァーノで私は工業デザインを学びました。入学当初はグラフィックデザイナーになる事を目標にしていたと思います。私は工業デザインとコミュニケーションデザインの授業が好きだったので、入学後、半年でやはりプロダクトデザインの分野でものづくりをしたいと思いました。最終的には工業デザインで卒業をし、家具デザイナーまたは家庭用品/インテリアデザイナーになる計画を立てました。


その後、パリでファッション/プロダクトデザインを手がけるデザイナーの元でインターンシップとして働き始めました。

モデルTiberius - Veronika Wildgruber


当初パリには4ヶ月間滞在をする予定でしたが、最終的には何年もの滞在になりました。私はインターンシップの後、フリーランスの仕事に就き、それがまた別のフリーランスの仕事に繋がっていきました。

やがて、当時ミクリと一緒に働いていた眼鏡制作者のジャック・デュランとスペースを共有していたイタリア人のデザイナーの下で働き始めました。


ミクリは街の有名人でした。誰もがミクリについて話していましたが正直なところ、私は眼鏡業界に関わっておらず、知り合いもいなかったため、ミクリのデザインは知りませんでした。私は彼と一緒に働く事をまったく考えていなかったので、彼の元で働く事になった時は全てがとても新鮮に感じました。


ミクリの元で働いた時は実に簡単な取り決めでスタートしました。「作業場を共有しましょう。私のアシスタントがあなたにアシスタントの仕事を提供するかもしれません」、と言う程度のものだったと思います。

私にとってそれは単にお金になる仕事だ、と言う事だけでした。しかし私は彼と働く事を決めました。彼は眼鏡について何も知らないデザイナーが参加する事が興味深いと感じたのだと思います。

眼鏡のデザインをさらに面白くするでしょうし、私の様なデザイナーと一緒にプロジェクトをする事を悪くないと感じたのだと思います。


彼は私にいくつかのコレクションを手伝うように伝え、私の観点でデザインするように言いました。熱望していた仕事とは言い難かったですが、ぜひ挑戦したい、と思いました。将来のキャリアへの絶好のチャンスと最初は思いませんでしたが、挑戦しない手はない、という思いでした。


アプローチの仕方がわからなかったので、最初のデザインは段ボールを使って製作しました。

そしてプロトタイプを製造元にアセテートで作成してもらい、2010年のシルモ展で発表しました。そしてそれがシルモドールを受賞したのです!眼鏡の世界に足を踏み入れて、初めて手応えを感じた瞬間でした。

大きな驚きでした。

モデルBriggs - Veronika Wildgruber


当時、私は眼鏡業界でブランドを立ち上げていなかったので、フレームはただの数字で、名前すらありませんでした。

シルモドールの受賞が、自分にはこの分野のデザインの才能があると信じ、この旅を始めるきっかけになったと思います。

やるのであれば自分の名前でブランドをやろうと思いました。コラボレーションや誰かのために働く立場ではなく、自分の為にやろうと思いました。


そこからは不思議な感じで、ゆっくりとした始まりとなりました。

4型のフレームの発表、そしてその2年後に4型のフレームの発表、というように。

それはまさにローンチでもコレクションでもなかったのかも知れません。自分の眼鏡業界での成長は自然体に近いものだったと感じています。

私は家具のデザインの作品作りも続けて行きたかったので、眼鏡業界に思いっきり飛び込んでは行きませんでした。もしあの時、家具のデザインの仕事を怠っていたら、自分の本来の夢から逃げている様に感じたと思います。


エルメスをはじめ多様なラグジュアリーブランドのデザインをされていますが、ラグジュアリー&ファッションハウスブランドとインディペンデントレーベル(眼鏡生産に特化した小規模のデザイナーズブランド)の眼鏡ブランドの仕組みについて、どの様に思われますか?

これはエルメスというブランドとの比較という点で、特に興味深い質問だと思います。

私はエルメスと働いた事しかないのでそのお話しかできませんし、あくまでも個人的な見解ですが、正直なところエルメスはほとんどインディペンデントレーベルのように機能していると思います。

つまり、エルメスはまだ主に家族経営で、多くの生産をフランス国内でしており、従業員の待遇や生産工程、そして使用する材料に関して高いモラルの基準を持っています。私は本当にエルメスを尊敬しています。


エルメスの(あの有名なスカーフを作る)シルクスクリーンの作業工程に招待され、参加して以来、その最終構成やドローイング、そして印刷作業、これらすべてに一定の価値がある理由が今では本当の意味で理解しています。非常に多くのクラフトマンシップと、沢山の工程と作業が費やされています。エルメスのやり方に本当に感謝しています。

大企業がどのように機能できるかを示す、模範的なブランドだと思っています。


もちろん、すべてのラグジュアリーブランドにとってエルメスと同じ認識は妥当ではない事はわかっています。ラグジュアリーブランドも一定の収益を上げなければならないですし、売上目標があり、経費を抑え、生産が安くなるように製造しています。なので、エルメスはインディペンデントレーベルと比較をするのに最適な会社ではないのかもしれません。

なぜなら、お話した通り、私はエルメスがインディペンデントレーベルのように機能していると思うからです。


ラグジュアリーブランドのアプローチ、つまりお金を節約する取り組み方は、インディペンデントレーベルを脅かすというよりは実際、インディペンデントレーベルにとって好都合に働いているのではないのか、と私は思います。

つまり、眼鏡の専門家は、市場を独占するラグジュアリーブランドと、インディペンデントレーベルの違いを認識しています。より本格的な、手作りの、または物語のあるフレームを探している方には、インディペンデントレーベルのフレームを提案します。要するに、ラグジュアリーブランドはインディペンデントブランドにとって業界を曇らす存在ではなく、光り輝く機会を与える存在だと思います。


前述の通り、多様なデザインの分野でお仕事をされていますが、眼鏡のデザインを探求したいと思いますか?それとも引き続き、様々なデザインの分野を追求する事を望んでいますか?

私は現在も多様なデザインの分野の仕事をしています。

なので、デザインのスタジオを継続していますが、ある時気づいたのです。私はブランドの一つの側面だけではなく、複数の側面を製作するのが好きだと言う事に。


もちろん眼鏡そのものをデザインするのは好きですが、そのほかに全体の宣伝材料やイメージ写真、ロゴなどです。私がデザインする物と製品は眼鏡ですが、ブランド全体に気を配るのが好きです。既存のものを改善したり、つけ足したり、新しいものを打ち出して、また改善したりしています。


正直にお話しすると、最初は眼鏡業界に完全に入り込む事に戸惑いがありました。今でもたまに、数日間、自分のデザインがとても気に入らない事がありますが、自分の作業工程を信じ、継続していると、突然、次の日には自分のやっている事と作った物がとても好きになります。おもしろいものです。


結局、私にとって眼鏡の最も好きな所、それは人々が実際に必要としているものであるという所だと思います。

それは、例えば義肢のようなもので、眼鏡は人の見ると言う行為を助けます。なので、自分が何をデザインしていて、なぜデザインしているのか、について自問自答する必要がありません。答えは簡単です。人々に食べ物が必要なように、質の高い眼鏡が必要で、それを一日中、毎日の様に掛け、見ると言う事が必要なのです。

それが私の眼鏡の一番好きな所で、おそらく眼鏡のデザインを継続しているとても大きな理由です。


好きなお仕事の分野はありますか?

難しい質問です。

私は眼鏡のデザインが好きで、10年以上やっているからか、少し快適に感じる事もあります。経験の浅い新プロジェクトに取り組むときも、その挑戦がとても気に入っていますが、どういう訳かそのプロセスはより辛いものとなります。なぜなら、不安が多いですし、考える事が多い、または自分の望む結果を得るために沢山の努力をする必要があります。

そんな挑戦が自分を満足させているのか?と言うのはプロジェクトによると思います。

自分が個人的なレベルでそのプロジェクトに関心を持って楽しんでいれば、そのプロジェクトは前向きなものだと捉えています。自分だったら購入しないものや、自分が好きではないものでは、自分の仕事は完了していません。これは自分の子どもの中から好きな子を選ぶ様なもので、選べないですよね?


ジュエリーデザインの仕事が眼鏡のデザインに影響しているとしたら、どのような形で影響していると思いますか?

それは私には逆の方向で影響が出ました。眼鏡のデザインをしているときにエルメスからジュエリーのプロジェクトの依頼を受けたのですが、その後はあなたもご存知ですよね。


私はジュエリーデザインの経験が無かったのですが、エルメスの為に制作した作品はとても厚いホーンで作られ、素材の扱い方と使用方法がアセテートと似ています。

また、ロープを通さなければならないリムは、フレームにレンズを入れるのと同じ方法で設計しました。デザインの取り組み方ではなく、技術の面で眼鏡を作る体験とかなり似ていたと思います。


インスピレーションはどこから得ていますか?

簡単に表現できませんが、私はクリーンで澄んだ美的感覚を大いに必要としていると思います。

私は特定のものが特定の形であるときだけ心地が良く、鮮明さとコントラストが好きです。それは道端の街灯であったり、粗い表面の中の滑らかな部分であったり、あるいは驚くほど素敵な色彩であったり、またはしばらく気づかなかったものである可能性もあります。

たとえば先日、自分たちの家の色をメモに取りました。とても素敵なのです。


何週間か自宅を留守にした後の事でした。

そんな事で、遠くに行くとさらにインスピレーションを受けます。家に居る時は周りの環境に慣れていますが、旅をするとより注意深く、すべてを取り入れようとし積極的に周囲を見渡します。

私は物からインスピレーションを受ける事が少なく、これらのような抽象的なものや細かいディテールなど小さな事からインスピレーションを得ます。


眼鏡のビジネスにおけるサステナビリティについてどの様にお考えですか?

良い質問ですね。私が眼鏡の仕事をするのが好きなもう1つの理由だと思います。


眼鏡自体がすでにかなり持続可能な物だと思います。小さく、そのほとんどが金属かアセテートでできていて、人が毎日身につける物です。すでにそんなに悪いものではありません。1、2週間後に眼鏡を捨てる事もありません。

環境への影響という観点から、私たちが焦点を当てる必要があるのは、生産廃棄物とパッケージングの方が多いと思います。

より循環的なシステムが必要です。


私たちがどこでどのように生産するかを精査する必要があります。残った物や廃棄されたものを再利用するだけでなく、そもそもどこから調達するかを意識する事もできます。

たとえばデモレンズのようにまだリサイクルできないものがありますが、もっと良い方法が現代ではあるはずだと思います。

完全に理にかなっている解決策があると思います。それらを見つける必要があります。


サステナビリティーは流行やアピールポイントではなく、眼鏡ブランドにとって定められたものになりつつあると思いますか?

ハイエンドのブランドはそうなって来ていると私は思います。理由は単純に、大企業が環境を無視して、世間に対して無関心なままでいる事を正当化できると思わないからです。将来的には定められたものになるべきですし、私たちはまだそこまで辿り着く事ができていませんが、きっと辿り着く事ができるでしょう。

現地生産への需要と、顧客がフレームの生産地にさらに興味を持ち始めていると言う事実が変化を引き起こすと思います。


眼鏡の未来に対する予測と希望はなんでしょうか?

発見も使用もされていない新素材に関しては、まだ多くの驚きがある事を願い、信じています。

あとは、より革新的な製造方法や生産方法でしょうか。おそらく数年後に振り返り、なぜ以前からこれを行わなかったのだろうか、と考えると思います。

美的感覚でいうと、もっと「見えない」眼鏡が次に来るかもしれないです。誰もが自分を表現したり、芸術作品を身に付ける事を望んでいるわけではありません。ミニマリストなフレームも求められています。私が予測する技術革新と組み合わせると、エキサイティングになる可能性がありますし、どちらにしても、楽しみな事である事を願っています。


私自身は新しいリサイクルが可能なフレームの素材に取り組んでいます。

進行中のプロジェクトなのであまりお伝えはできませんが、うまくいけばそれも非常に興味深い素材になります。

近い将来結果をお見せする事ができると良いです。


ブランドの詳細については、www.eyewear.veronikawildgruber.comにてご覧いただけます。


このインタビューは、UKオンラインブログEyestylist.com専用にVictoria Bruntonにより書かれたものです。

INOCO LAB JAPAN株式会社がEyestylistの許可の元、翻訳、掲載をしています。


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